海外子会社に課された罰課金及び損害賠償金を、親会社が負担する場合の課税関係|  株式会社マース・タックスコンサルティング


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海外子会社に課された罰課金及び損害賠償金を、親会社が負担する場合の課税関係

Ⅰ.事実関係

  • 1. 当社は東京都に本社を有する内国法人P社ですが米国に100%子会社S社を所有しています。P社は日本国内で電子部品Xを製造し、S社を通じて米国で販売し約30%程度のシェアを維持しております。
  • 2. ところで10数年前に米国内でXを販売する同業他社数社と当社がS社の代理となって一種の価格協定を締結し、安定した販売価格及びシェアを維持してきました。
  • 3. ところが、数年前にこの価格協定の存在が明るみに出、独禁法の対象となり、今年になって約5千万米ドルの罰金が連邦政府より子会社に課されました。更に、Xの消費者たる米国法人数十社より民事訴訟が提起され、今年になって約5千万米ドルのS社負担損害賠償金(懲罰的賠償金を含む)の支払いが確定しました。

Ⅱ.質問

  • 当社は子会社が支払った罰金及び損害賠償金の一部を負担したいと考えますが、日本の税法上どの部分を負担することが認められるでしょうか。

Ⅲ.回答

  • 1. 日本の税法上、内国法人が納付する外国政府に対する罰金及び科料は損金に算入されません(法法第38条第2項第5号)。従って、子会社が連邦政府に支払った罰金は貴社が負担しても法人税法上の損金とはなりません。但し、法基通9-5-6により裁判手続きによらない罰金である場合はこの限りではありません。
  • また、不動産取得の際に買い手が売り手に支払う固定資産税日割り額は買い手が直接市町村に納付したものでないから租税公課に該当しないとする判例を引用できるケースがあるかもしれません。
  • 2. 次に損害賠償金ですが、罰金と異なり損金不算入を規定する条文は法人税法上認められません。貴社主導の下に価格協定を締結しており貴社の行為が損害賠償支払いにあたり主因となっている事実が認められること、貴社が製造利益をS社が販売利益をそれぞれ享受しており、利益の享受者がその受益割合に応じて費用(及び損失)を負担することが相当と認められ、貴社にも損害賠償金を負担すべき理由があるため国外関連者に対する寄付金には該当しないと考えます。
  • 3.2.でいう受益割合の例としては次のようなものがあります。
  •   a.独禁法に違反した期間中の両社の販売利益の累積額の比率
  •   b.同上期間中の両社の営業利益の累積額の比率
  •   c.同上期間中の両社の税引き前利益の累積額の比率
  • これら三例の中では②が最も受益割合として適切かと考えます。①の例ではS社の多額の販売費及び一般管理費を考慮しておらず、③の例では主としてP社の営業外損益及び特別損益を含んでしまうからです。
  • 4. 米国の税法上、罰課金及び違法行為に関連する支出は損金不算入ですので(内国歳入法第162条。但し、独禁法違反の場合は三分の二損金不算入のケースもある)ご注意ください。

(国際税制研究第5号掲載)LinkIcon戻る