海外支店に帰属する資産・負債を海外合弁会社に現物出資した場合の課税関係|  株式会社マース・タックスコンサルティング


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海外支店に帰属する資産・負債を海外合弁会社に現物出資した場合の課税関係

Ⅰ.事実関係

  • 1. 製造業を営む内国法人弊社は東南アジア某国において、第三者たる現地法人と合弁会社(以下「JV」という)を設立し、当社が51%、現地法人が49%出資する予定です。
  • 2. ところで、弊社は某国において支店を有しており、今回のJV設立に当たり、金銭に加えて当該支店に帰属する資産・負債、及び、現地で成立している製造に係る特許権を現物出資し、支店で働く全ての役員・従業員をJVが引き継ぎます。
  • 3. JVにおいては弊社が製造部門を掌握し、現地側が販売部門を掌握し、良い補完関係を期待しています。
  • 4. 某国の税務上、本件現物出資取引は非課税になるようです。

Ⅱ.質問

  •  この場合、弊社の現物出資に係る課税関係はどのようになるのでしょうか。

Ⅲ.回答

  •  現時点では確定的な回答はできないものの、税制適格の現物出資である限り、非課税になるものと思われます。

Ⅳ.検討

  • 1. 現物出資取引は原則課税対象ですが、税制適格現物出資は非課税とされています(法法第62条の4)。
  • 2. 適格現物出資に該当するには、貴社は非現物出資法人JVの株式につき、50%を超え、100%未満の株式を有することになりますので、本件の状況を考えると以下の条件を満足する必要があります(法法第2条12の14号ロ)。
  • a. 現物出資の対価としてJV株式のみの交付を受けること
  • b. 資産引き継ぎ要件を満足すること
  • c. 従業者引き継ぎ要件を満足すること
  • d. 事業継続要件を満足すること
  • e. 株式継続保有要件を満足すること
  • f. 現物出資される資産・負債が以下のものでないこと
  • ①国内にある不動産又は国内にある不動産の上に存する権利
  • ②鉱業法の規定による鉱業権
  • ③採石法の規定による採石権
  • ④その他国内にある事業所に属する資産・負債(但し、発行済み株式の25%以上を所有する外国法人の株式を除く)
  •  本件では、現物出資対象特許権につき国外事業所に帰属するかどうか再度検討が必要です。
  • 3. 今回の現物出資は、概ねこれら要件を満足できそうですが、海外子会社に対する現物出資につき、課税当局の公式見解がまだ明らかにされていません。
  •  しかしながら、
  • a. 法人税法の条文上、海外子会社に対する適格現物出資を否定する規定は認められないこと。
  • b. 旧法人税法上でも持ち株要件は厳しかったものの、海外子会社に対する現物出資は認められていたこと、その一方、現行規定において持ち株要件は緩和されているものの、他の要件が付加されていることによりバランスが図られていること。
  • c. 内国法人である貴社は当該支店等に帰属する実物資産からJV株式に所有資産の内容は変更されたが、日本の課税当局は低い税務簿価が付されたJV株式を通じて依然として課税権を保持しており、国外取引だからという理由で適格要件の適用を否定する根拠が乏しいこと。
  • 等の理由を根拠に、上記税制適格の要件を満足する限り、非課税になると考えます。

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