米国法人との間でライセンス契約を締結する場合の課税関係(1)|  株式会社マース・タックスコンサルティング


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米国法人との間でライセンス契約を締結する場合の課税関係(1)

Ⅰ.事実関係

  • 1. 内国法人である弊社は米国法人X社との間で特許権のライセンス契約を締結しました。
  • 2. 本件ライセンス契約はX社が有する米国において有効な特許権を弊社が使用することを認める対価として支払うものです(日本国内及び米国外において特許は成立していません)。
  • 3. 弊社は日本国内で当該特許権を利用しながら製品Yを製造し、米国でその製品を販売します。
  • 4. 本件ライセンス契約は以下のように規定されています
  • a. X社は当該特許を用いた製品Yの販売を許諾する。
  • b. ライセンス許諾の対価として弊社はX社に米国内販売金額の3%を支払う。
  • 5. X社は日本国内において恒久的施設を有しておりません。

Ⅱ.質問

  •  弊社がX社に本件ライセンス契約にかかる使用料を支払った際に、弊社はどのような納税手続きが必要ですか。

Ⅲ.回答

  •  貴社はX社からの適格な租税条約にかかる届出書の提出を条件に、所得税の源泉徴収義務が無くなります。

Ⅳ.検討

  • 1. 所得税法第161条7号イによれば、日本国内で業務を行う者から非居住者に支払われた使用料は国内源泉所得に該当します。貴社は国内において業務を行う者に該当しますから、所得税法第212条により20%の税率(同法213条)で源泉徴収義務を負います。
  •  但し、租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律第3条の2により、適用される租税条約に別に定めるところがあれば、その定めるところにより課税がされます。
  • 2. 日米租税条約第14条によれば日本国内源泉所得については日本が10%の税率で課税することが出来る旨が規定されています。更に同条約第6条(3)において、本件特許権が日本国内で使用された場合に国内源泉所得であると規定されています。
  • 3. ところで、X社が有する本件特許権は日本国内では成立しておらず、製造又は販売を日本で行っても米国内で販売を行わない限り貴社はX社に使用料を支払う理由が無く、貴社は日本国内で本件特許権を使用することはあり得ないと考えます。言い換えれば本件に限れば特許の使用地とは販売地にあると考えられるのです。
  •  従って、本件特許権の使用地は日本国外であると結論づけられるため、X社からの貴社へ所定の届け出を行うことを条件に所得税の源泉徴収は不要となります。
  • 4. 但し、課税当局は伝統的に特許権の使用地は製造地にあると考えており、同様の事例についてシルバー精工事件(東京高裁平成4年(行コ)第133号 平成10年12月15日判決、東京地裁平成4年10月27日判決 行裁例集43巻10号1336頁)で係争中でありますので、その最高裁における判決に注意を払う必要があります。

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